物議を醸す READY STEADY TOKYO 自転車ロードレースの観戦エリア

いよいよ来週の日曜日7月21日に2020年東京オリンピックの自転車ロードレースのテストイベント READY STEADY TOKYO が開催されます。

自転車ファンにとってはとても楽しみなイベントであることは間違いない。公道を走るロードレスなので、(当たり前だが)交通規制は絶対に必要であり、下り坂などのスピードの出る場所などは観戦禁止エリアを設けることも当然であろう。しかしながら、ファンとしては見どころと思われる場所を含めてほぼ大部分*1が観戦禁止エリアに設定されており、SNSで失望、批判、落胆などの声が多数上がっている。私もその一人です。その辺りは以下の cyclist.sanspo.com の記事にまとまっています。

cyclist.sanspo.com

各地域の交通規制区間のリンクは以下の 記事にすべて掲載されています。

tokyo2020.org

現在、世界最大規模のグランツール Tour de France 開催中で、私も毎日JSportsで熱いレースを観ているのですが、ときには観客の人たちの自宅の近くがコースだったり、勝負どころの登り地点で観戦応援したり、子供たちも憧れの選手たちが走る姿を目に焼き付けたり、走る選手も大勢の観客も最高にテンションが上がる瞬間が毎日映像として届けられます。これこそがロードレースです。

ところが、今回のROAD STEADY TOKYO 自転車ロードレースでは、のきなみ観戦禁止エリアに設定されており、観客が誰もいないロードを世界から集まった選手が走ることになります。こらはもう違和感でしかありません。しかも今回はせっかくのテストということなのに中継も行われないらしい。先日の富士スピードウェイで行われた全日本選手権の放送を観た人はわかると思いますが、日本のカメラワークはお世辞にも良いとは言えません。であればもっとテストした方が良い気がします。

自転車ロードレースの魅力を伝えるという大きなミッションはほぼ達成されないことになるでしょう。大変残念でなりません。

今回の観戦禁止エリアの決定理由はとにかく安全第一に考えた結果だとのこと。なるほど、観客を寄せ付けなければリスクは減ることは間違いないでしょう。ただひたすらリスクとなる要素を少しでも減らしてとにかく安全第一にしたいのであれば、柵で囲まれた周回コースを100周走るようなコース設定がベストなのかもしれませんね。Tour de Franceのようなヘリからの空撮などは、もしヘリが墜落したら大変だということでもっての外なんでしょうかね...

では、日本で安全第一を優先した結果、なぜこのような結果になってしまったのでしょうか?恐らくこれにはさまざまな理由が考えられると思います。ここですべてを語ることは難しいですが、いくつか私が思いつくことを書いてみます。

自転車観戦慣れしていない

これはすぐに思いつくことでしょう。Japan CupやTour of Japanでは、これほどまでに観戦禁止エリアを設定いないのは、開催されている場所に普通の住宅街が多くなく、観客のほとんどが自転車ファンということもあり、ある程度観戦慣れしているのが大きいでしょう。Japan Cupでは毎年古賀志林道の九十九折の上り坂で沿道の大勢のファンが熱い声援を送っています。歩道なんてありませんが、もちろん観戦禁止エリアではありません。選手の息遣いが聞こえるほどの至近距離で観戦できます。これはロードレースの醍醐味のひとつですね。(下りは立入禁止になっています)

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2014年のJapan Cup。古賀志林道にて

    自己責任の考え方が薄い文化

    SNSなどで「日本は~」とか「日本人は~」とか日本人批判をときどき目にします。個人的には、そういった批評批判だけを書き残すのはあまり好きではないし、読んでいてもどこかいい気持になれないときもあります。ただ、今回の件の背景には、日本/日本人の自己責任の考え方の現れがあるのではないだろうかと思います。

    どういうことかと言いますと、何かリスクがあったり事故があったりすると、日本は運営側、管理側、主催者側などの責任となることが多いです。アメリカは(恐らく多くの他の国も)どちらかとうとそれは自己の責任だろうという考えが多い気がします。

    例えば、数年前に私がグランドサークルで断崖絶壁などが多い大自然満載の国立公園を巡ったときに見たことですが、断崖絶壁でそこから落ちたら絶対に死ぬだろうという場所がときどきあります。実際に年間数名は落ちて亡くなることがあるそうです。ぎりぎりまで行って足を滑らせて落ちてしまったら、国立公園の事務局とかそういうところの人たちが責任を問われるというわけではなく、それは自己責任なんです。

    では、日本ではどういうことになるか想像してみましょう。仮に足を滑らせて亡くなった人がいると、もしかすると公園の運営管理側の安全管理が問われるかもしれません。そこで、すぐに崖から落ちないように、地面に杭を打って柵を作ってしまうかも知れません。大自然に杭を打ったら自然に影響を与えてしまうし、景観も台無しになってしまうかも知れません。その部分を大切に考えて、自然に手を加えない考え方と、管理責任が問われるから安全のために自然やその他を犠牲にしてしまう考え方。どちらがいいとか悪いとかという議論をここでするつもりはありませんが、そういった自己責任や安全管理責任の所在などの日本の考え方の現われのひとつが、今回のこの「安全第一、観戦禁止」という決定に大きく関係している気がしています。

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    写真は2014年にユタ州Bryce Canyonに行ったときのもの。実はかなり足がすくんでおりましたw

    さすがに1週間後なので、決断が大きく覆る可能性は極めて低いと思いますが、2020年の本番のときには日本も安全に配慮した自己責任に基づいてロードレースを観戦し、多くの人に自転車ロードレースの魅力とワールドツアーレベルの選手の走りの凄さをぜひ生で観れるようになって欲しいと切に願います。