キッドナップ・ツアー

キッドナップ・ツアー

キッドナップ・ツアー」(角田光代著)。
takoratta さんのブログで紹介されていたのを見て読んでみたくなったので購入。実際に読んだのは2ヶ月ほど前なので細かいところは忘れかけれているけど、ちょっと不思議な読後感を覚える小説です。
小学校5年生の女の子ハル(娘と同じ年齢だ)が、おとうさんに誘拐(=キッドナップ)されるストーリーで、終始この女の子ハルの視点で進行し、実際の文章もハルの語り口で書かれている。何故おとうさんが別居状態で、何の目的で実の娘を誘拐したのかといった説明が一切ないまま物語は進む。この辺りは徐々に明らかにされるのだろうと思っていたら、いつまでたってもそういった説明的なものは殆どなく、結局最後まで殆どない。私のような凡人はついついそういうことがわからないとむずむずしてくるものだが、そこを明かさない辺りがこの小説(と著者)の魅力でもあるように思える。
誘拐というタイトルから、もしかするとサスペンスっぽい部分も少しはあるのかと勝手に想像していたけど、そんなものとはまったく無縁で、これは結局のところ父と娘の物語です。おとうさんは、どこかだらしなくてカッコ悪い。一見ダメおやじなのだが、それは世間一般の立派なおとうさんという物差しで測った場合のものに過ぎず、そういったものにとらわれていない自分をしっかり持っている人なのかもしれない。でも実はそんないいものじゃないのかもしれないけど。
そんなおとうさんとちょっぴりませた女の子の夏休みのユウカイ旅行のお話、独自の価値観を持っているけど、ちょっぴりだらしないのも悪くないとか、俗世間に染まりたくないとか思っているお父さんに手にとってもらいたい書です。もちろん、小学生高学年以上の女の子にも薦められます。