敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース

敗北のない競技:僕の見たサイクルロー

敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース」 土井 雪広 (著)。
去年の夏にタイラー・ハミルトンのベストセラー「シークレット・レース 〜 ツール・ド・フランスの知られざる内幕」を読了した後に読んだ本がこれです。どちらが先に出版されたのかは知りませんが、ドーピングに関わる部分は少しですが共通している部分があります。土井選手がドーピングに関わっていた訳ではないので誤解のないように。
Team Ukyo に移籍してすぐくらいのときに、チームメイトと大垂水峠を走っていくのを見かけたことがあります。プロの選手が自分たちと同じようなところを走ることは当然あるでしょうが、実際に遭遇するとびっくりしますね。
ヨーロッパで走り始めた当初は出るレースぜんぶリタイア。30分もてばいい方だったそうです。いかにヨーローッパのワンデーレースが強烈なのかがわかります。2005年にアムステルダムゴールドレースでちぎれてリタイヤしたあたりの時代の苦悩がひしひしと伝わってくる。*1 毎日ひたすら、シリアル、練習、ラーメン、ジブリ、パスタで、言語の問題でアドバイスをもらうこともできない時代だったらしい。
その後パワートレーニングでかなり乗り込んだ結果、遠い目標だった完走を果たし「何か」を掴んだのが2006年のシーズンだそうです。やはりこのレベルの選手は壮絶なトレーニングをしているんですね。この辺りからわたし自身、読んでいて重苦しい気持ちから、熱く応援している気持に変わります。そして、EPOの話題にも触れています...
25歳でいったんヨーロッパから逃げようとした話と、結局そうはせずにスキル・シマノと契約することにした土井選手。やっぱり精神的に強い方です。「自分を騙さないことで、正しい答えに近づくことができる」という言葉は、心にしみました。
先日、ジテツウの帰りにマイナス6.2℃という日があったけど、オランダでマイナス8℃の中、長時間トレーニングをした彼らは超絶である。「サイクリストは苦しむのが仕事なんだよ」というトレーナーの言葉は、この仕事の何か本質的な部分を表現している気がする。
日本のファンがドーピングに対してあまりにも無知であることと、ロードレーサーだけに清廉潔白を求めることに対して少し苛立ちもあったようです。1年で急に強くはならない、少しずつだ。もし急に強くなったとしたら、何かを疑うことも必要なのだろう。
ブエルタを完走した土井選手でしか語れない事実と考えがこの本には詰まっていると思う。そして、土井雪広という選手は、本当に人を助けるのが好きなんだなということを知りました。もちろん自分の勝利も欲しいでしょうが、本書を読む限り人を助け、エースをアシストすることに心底喜びを感じている選手だということがわかります。
今は活動の場を日本に移していますが、いつかまたグランツールを走るときが来るのでしょうか。それは私にはわかりませんが、陰ながら応援しています。