「マルコ・パンターニ―海賊(ピラータ)の生と死」(Beppe CONTI著、工藤知子訳)。
原題は "una vita da pirata Marco PANTANI"。デリーチュ・ジモンディが序文を寄せています。
言わずと知れた海賊の異名を持つ伝説のクライマー Marco PANTANI の生涯を綴った本で、以前から amazon の欲しい物リストに入れていた1冊です。でも2500円とちょっと高いので買うには至っていませんでした。
先月家からすぐのところにできた新しい図書館に立ち寄ってみたところ、なんとこの本がありました。ランス・アームストロングの本ならばまだしも、パンターニの本があったのはかなり驚きです。図書館にパンターニ好きの人でもいたのでしょうか。しかもこの図書館、施設が新しいだけではなくそこにある本すべてが新品なのが凄い。こんな光景二度とお目にかかれないでしょう。
偉大なる才能を持ったチャンピオンでありながら、落車による怪我と苦難、官権やマスコミの執拗な告発、数々の苦悩を幾度も乗り越えて戦列に復帰してきたマルコ・パンターニの衝撃の死までの生涯は、あまりにも壮絶でした。光と影の山岳のモンスター海賊に今でも人々が魅了され続ける理由はわかります。あのヒルクライムでの破壊的なアタック、それも2度、3度、場合によってはもっと繰り返して行われる攻撃は見る者を釘付けにしてしまいます。
本書ではその栄光と悲劇が紹介されているのですが、その一部を紹介します。
- 1995年のツール・ド・フランス、ラルプ・デュエズでインドゥラインを屈服させ史上最高の上りのタイムを記録した時の驚異的な走り
- 1995年のミラノ〜トリノでの急降下の左カーブで車線上に立ち往生していた車とすさまじい衝突をして、腓骨と脛骨がまっぷたつに折れた悲惨な事故
- 1997年のジロ・ディタリアの第8ステージのキウンツィ峠の下りでプッティーニの落車に巻き込まれ、何度目かのジロが煙と消えた
- 1997年のツール・ド・フランスの第13ステージ、ラルプ・デュエズでウルリッヒを置き去りにして、自身の記録を30秒も短縮した快挙
- 1998年のジロ・ディタリア、パンターニが不運に打ち勝ち、ミラノの表彰台に上がったこと
- 1998年のツール・ド・フランス、ガルベエ峠での殺人的なスパート、そしてついにダブルツールを制覇
- エリスロポエチンによるドーピング、当時の選手の EPO 使用の現状、論議を呼んだヘマトクリット値の許容値
- 2000年、ジロでガルゼッリのアシスト役を引き受け、復帰。第19ステージでは2位という走りを見せた。
- 2000年、ツール・ド・フランスの第12ステージ、モン・ヴァントゥーでのアームストロングとの一騎打ち、そして論戦
いずれも読んでいるとぐいぐいと引き込まれます。映像が思い浮かんできそうです。でも YouTube とかではなく DVD などのメディアできちんとした映像が見たくなりますね。でもあまりにも凄いのでイメージトレーニングとしては逆効果ですけど、坂を上るときに、(妄想で)パンターニになりきって最後のひと踏みが頑張れるかも。:-)
本書にもマル・コパンターニの写真が掲載されていますが、単行本なのでほとんどモノクロです。カラーの写真が沢山掲載されている本ですと、2004年にパンターニの追悼特集が組まれたチクリスティ (Numero.1)がお勧めです。