アミターバ ― 無量光明

アミターバ

アミターバ ― 無量光明」(玄侑 宗久著)。
キャバオさんに薦められた一冊。住職であり芥川賞作家でもある玄侑 宗久が、臨死体験記録などをもとに死について描いた物語です。
死期が近づいたときや死が訪れたときというのは、どういうものなのかをその本人の視点でつづっている。煩悩が緩んできて、出来事や景色をカレンダーに従って並べたりしなくなるという現象が起こるそうです。時間の束縛が緩まっている、または複層的な時間が平板な現実に挟まって訪れる。これは、周りの人間から見ると、うわ言を言っている(もしくはボケている)ように映ることかも知れない。
主人公(関西弁です)にこういった現象が現れ始めてくるときの描写は、実にリアルである。正直最初の頃は少し恐怖感すら覚えてしまった。
本書は、決して宗教的なことが綴られただけの物語ではなく、科学的研究の成果や、意識と物質のつながりの新しい理解を開こうとしている量子論、心理学など科学的な内容が結構盛り込まれていたので驚いた。アインシュタインの理論も登場します。
自分が実際に死を迎えるとき、きっとこのような体験をするんだろうなと思わせる説得力とリアルな描写に驚かされます。最初は、恐怖感があったけど終盤は健やかというか清らかというか何かそんな読後感を覚えました。