4月28日に本屋大賞について触れ、今年の受賞作はリリー・フランキー(著)「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」という作品。嫁はんが既に読んだこの本が「泣けるでぇ」というので読んでみました。ここの所、ビジネス関連の本が多かったのでこういった小説はいい気分転換になった。リリーフランキーの本は読むのが初めてで、この人についての知識も殆どゼロ。唯一の知識は、バライティ番組「水10」に出ているお笑い芸人よりも面白いコメントをする汚いオッサンというものです。
オカン - ボクの一番大切な人。たったひとりの家族。ボクのために自分の人生を生きてくれた人。このオカンはとにかく偉大である。
小学校時代の描写が特に凄いが前編を通してリリーフランキーの観察力には脱帽である。時には攻撃的でもあり、客観的でどこか冷めた(冷酷ではなく)、でも共感を持てる視点も大きな特徴ではないだろうか。
オトンの正体が推測できた辺りからオトンが登場するたびに、どこか緊張させられてしまう。
東京の大学時代 - おかしな違和感とだらしない自由
卒業後しばらく続く、なにをしていいのかわからない堕落した相変わらずの日々。「自らを戒めることのできない者の持つ、程度の低い自由は、思考と感情を麻痺させて、その者を身体ごと道路脇のドブに導く。」
終盤の「四月十二日木曜日」といった日付で1行とり、その前後に空行があるような文から始まる部分が何日か続く。これは、文字面では単なる日付なのだが物凄く多くを訴えかけえ読む側にずっしりと重くかつ迫り来る緊張感を与える。この辺りから明らかに心拍数があがってきたのが自分でもわかった。
「ボクが子供の頃から一番恐れていたこと。宇宙人の来襲よりも、地球最後の日よりも恐れていたこの日。」幸い、私の両親はまだ健在だが、既に「悲しみの始まりと恐怖の終わり」を経験した人にとってはきっと別のインパクトがある節かもしれない。「ママンキーのひとりごと」つまりオカンの遺言は、涙腺の蛇口を盛大にひねってくれた。
やられた。ベストセラーになったのはそれなりの理由がある訳だ。東京という場所のある種の恐ろしさと家族の愛と生と死についての美しさと悲しさと痛さがつまった好作である。「泣けるでぇ」はまんざらでもなかった。