世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法

世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法」ピョートル・フェリクス・グジバチ (著)。
プロノイア・グループ代表取締役で元Googleで人材育成と組織開発に携わっていたPiotr Feliks Grzywacz氏が最高のチームづくりについて書いたのが本書です。
冒頭からいきなり能力のピラミッド、チームメンバーの心理的安全性を高めチームの成果を高めるにはといった話が始まり一気に引き込まれます。この心理的安全性というものが実は最も大切なことなのでしょう。本書はマネージャー職の方はもちろんですが、そうでなくてもとても役に立つ内容が満載です。ここに書かれている優秀なマネージャーの特徴を知ってしまうと良くも悪くも自分のマネージャーや他のマネージャーの何が優れていて何がそうでないのかが見えてきます。すべて見えないことの方が幸せなときもあるかも知れませんがw
コーチングが大切であることは言うまでもありませんが、コーチングは対個人でけでなく対チームに対してもできるとか、GROW (Goal, Reality, Option, Will)*1の話、生産性の高いチームの特性、マネージャーの大切な役割などの説明はどれも非常に説得力があり、私自身もとても共感する部分がほとんどです。コーチングのときにこんな質問をすればいいといったことを書いている本はよくありますが、前提条件が抜け落ちていることが多い気がします。それが無条件の肯定的関心で、それが何を意味するのかは本書を読むとよく理解できます。
その昔私も 1 on 1 でタスク管理のようなことをしていましたが、幸い今はそういったことだけをすることはありません。本書でも 1 on 1 はそういったことではなく何をするためのものかが示されています。人は怠けることもあるし、失敗したり後ろ向きになることもあります。そういったときに性善説に立ちながら何をするかがマネージャーの役割でもあります。本書で紹介されているメディテーションの方法はどこかの本で読んだ女性から相談される悩みをどのように対応するのかに共通する部分があるなぁと感じました。
チームのパフォーマンスを上げるには、マネージャーはチームメンバーとどのような会話が必要なのかについての解説を読んで、自分が現在実践していることもそれほど悪くないんだなと安心した部分が少しと改善が必要だなと感じた部分が沢山ありましたね。
自己認識から自己効力感への変遷、価値観ベースの質問、マネージャーのやるべきこと3つ、今日のビジネスのあり方、パフォーマンスの3つの時間軸(短期的、長期的、随時的)などなど頭ではぼんやりと理解しているつもりであった事柄もこうやって体系的に理路整然と語られると自分の中でも整理ができて大変参考になります。
ピラミッド型からツリー型の組織へという話の部分は、自分の環境ではまだまだ進んでいないテーマです。これは私ごときの一個人で変えていくのは簡単ではありませんが、そうなったらどうなるんだろうというワクワク感はありますね。
私自身現在最も意識して取り組んでいることが、自分自身にもチームメンバーにも学びの機会を与えるということ。権限移譲もそのひとつですね。モチベーションは、Purpose, Mastery, Autonomyの3つの要素が揃うとよいらしいので、ときどきその点を自問自答したり相手に質問したりすることは大いに役立ちそうです。
Diversityについても述べられていますが、その点はかなり叩き込まれているせいか目新しいことはさほどありませんでしたが、ふむふむその通りと頷くことは多かったですね。また、最近何人かの人によく話をするのが本書でも述べられている「完璧主義」ではなく「実験主義」でなければならず、それがよい集合知を得るということです。まさに Agile です。Learning Agility という言葉も使われており、そのスキルがマネージャーにもメンバーにも求められています。
幸い、私の周りにはあまりいませんが、オールドエリートが威張っているような会社は辞めた方がいいといった内容もいいですね。同感です。Traditionalな日本企業はいまだにこういったことが多いのではと想像します。
プロノイア グループの理念が著者の名前にちなんだ P.I.O.

  • Play Work
  • Implement First
  • Offer Unexpected

これはめちゃくちゃ参考になるし、めちゃくちゃ共感します。
Employee Experience, 先読み、Sympathy, 気配り。こういった単語だけを並べるとわかったつもりになってしまうかも知れませんが、意外と我々は本当の意味を理解していないのかもと気づかせてくれます。
本書で紹介されている Situational Leadership というフレームワークは私もトレーニングを受けたことがあります。メンバーのSkillとWillに応じて接し方を変えることは絶対必要です。マネージャーのコミュニケーションの3つの原則は思わずにやりとしてしまいますね。
Googleの考え方では、1人のマネージャーが面倒を見られるメンバーの数は7人以内。頑張っても10人以内とされていたそうです。15人も20人もいると十分に面倒を見れているかというと、決して満足のいくレベルではないということになるのかもしれません。(遠い目...)
Googleのチームマネージャーももちろんプレイングマネージャーですが、私がよく口にするプレイングマネージャーとは少し定義が異なっていました。かつ、一般的なプレイングマネージャーと何が根本的に異なり、どうあってはならないのかも解説されています。
目からうろこが落ちたのは、人を採用するときに Culture Fit ではなく Culture Add であるべきということ。頭の中では Diversity が叩き込まれていたつもりでも、ある人をチームのメンバーに迎え入れるべきかどうかを判断する際に無意識にチームにフィットするかどうかという観点を盛り込んでしまっていました。なるほどこれではダメですね。
マネージャーとしては重要な役割であるメンバーの評価についても、行動ベースの評価や引き算の評価などがすぐに活用できる内容でとても参考になります。
他には Google の話として、OKR(Objective and Key Results) はSMART(Specific, Measurable, Attainable, Relevant, Time-bound)でなくてはならないとか、ピアボーナス制度、Be Scrappy、マイクロキッチンの廊下が狭い理由など興味深い内容もあって楽しく読めました。
日本独特の「飲みニケーション」というコミュニケーション方法がすっかり少なくなった(?)と言われる今日この頃で、そもそもこの飲みニケーションを否定する人も増えてきた気がします。著者のピョートルさんは、ポーランド出身なのにこの「飲みニケーション」を否定していないのも興味深いですし、すっかり減ったとはいえ飲みニケーションが嫌いじゃない自分はますます共感してしまったのでした。(^^)

*1:ここでのOptionは行動計画