Hit Refresh


Hit Refresh” Satya Nadella, Greg Shaw, Jil Tracie Nichols
Hit Refresh (ヒット リフレッシュ)」サティア・ナデラ、グレッグ・ショー、ジル・トレイシー・ニコルズ (著)
ティーブ バルマーの後に3代目マイクロソフトCEOになったサティア ナデラが執筆したのが本書「Hit Refresh」である。
読んでいるときからそうでしたが、読後も個人的にはかなり学びが多い一冊となりました。一般的にはサティアが就任してからさまざまさトランスフォーメーションが始まったと思われがちかもしれないが、実はスティーブ バルマーこそがもっとも改革の必要を感じていたことがわかり、改めてバルマーの偉大さを知ることができたのも収穫でした。
そして本書では、サティアは学者、小説家、著名人、歴史的人物などかなりの広範囲の人々の言葉を引用しており、その知識と情報量にも驚かされる。きっと私などには理解不能なほど頭が良い人物なのだろうし、そういう人が未来を見据えてビジネスをドライブしていくのだろう。*1 そして、彼が自らを「コンピューターエンジニアである私にとって…」と言っているところが、エンジニアにとっては一層魅力的に感じたのではないでしょうか。「だった」ではなく「である」です。自らを社長でなくコンピューターエンジニアというCEOはそういないかもしれない。

未来は私たちの中に入り、私たちの中で姿を変え、しばらくしてから姿を現す

そんな立派な人が常に「私の存在理由は何か?」と自問自答している。当然我々も同じことをすべきだろう。

マイクロソフトは、競争心をもとに一致団結することで有名だ。しかし、マスコミはそんな話を好むかもしれないが、私のやり方ではない。羨望の気持ちや闘争心ではなく、目的意識や仕事への誇りを抱いて会社を率いていくのが、私のアプローチだ。

これは惹きつけられました。人間の成長度合いをレベル化することはできないが、あえて言うならばレベルが数段以上上にいる気がしました。
日々の現実的な仕事においても身近な教訓というか再認識させられたのが、「完全であるより一貫しているほうがいい」とか「一時的なものの向こう側を見据えなければならない」というもの。たしかにサティアはビジョンもそうだがメッセージが一貫していてぶれないです。3つのCもとても腹落ちしました。

  • 胸を躍らせるような「構想 (concept)」
  • その実現に必要な「能力 (capabilities)」
  • 新たなアイデアやアプローチを受け入れる「文化 (culture)」

マイクロソフトに限った話ではなく、NPSの指標がよく使われる理由は、ただ顧客に使われるだけの製品/サービスではなく、顧客に愛される製品/サービスを提供しなければならない。クラウドの世界では、この「ファンを作る」ということが今まで以上に重要になってくる。
マイクロソフト機械学習量子コンピュータなどさまざまな研究開発がされていることは意外と知られていない。もっと宣伝してもいいんじゃないかな。
「Empathy」という単語がたびたび登場する。サティアにとってアイデアは活力源、共感は基軸と書かれている。
企業のカルチャーを作るもしくは変えることはとても大変なことで、マイクロソフトのような巨大企業なら尚更である。これは決してトップダウンで作られるものではなく、社員の間に広まるものであり、何千、何万もの社員が毎日下す数えきれないほどの判断の総体であると述べている。そしてその変革は膨大な労力と時間がかかるがそれに見合ったご褒美もある。カルチャーを大切にしている会社は、人を大切にし人を惹きつけると思う。
AI は IQ を EQ で補っていかない限り、つまずくことになるとか、AI を第3のランタイムと表現したりとか、「人工飛行」でななく単に「飛行」というのと同じように「人工知能」という考え方をやめて「知能」とみなすべきだとか、読んでいるととてもワクワクさせられます。
窓(ウィンドウズ)から雲(クラウド)を見る景色は悪くないですよ。😉
ちなみに本書の収益はすべて「マイクロソフトフィランソロピー」に寄付されるそうです。

*1:そんな彼がマイクロソフトに入社した25歳のときの仕事は Windows NT のエバンジェリストだったというの知りませんでした