おもてなしの経営学 〜 アップルがソニーを超えた理由

おもてなしの経営学

おもてなしの経営学 〜 アップルがソニーを超えた理由」(中島聡著)。
マイクロソフト在籍時は Windows, Internet Explorer の開発をし、現在 UIEvolution の CEO。誤解を恐れずに言えば、私は中島聡氏のことをビジネスのセンスも持ち合わせた天才プログラマーだと思っている。ブログ Life is beautiful も有名です。
著者は、英語の User Experience に対応する適切な日本語は何かと考え、ユーザーエクスペリエンスだとエクスペリエンスが一般的ではないし、エクスペリエンスというと「経験」という日本語があてられがちだが、この場合は「経験」ではなく「体験」。では「ユーザー体験」ではどうかというと、やはりしっくりこない。そこで User Experience とは何かを突き詰めた結果「おもてなし」という日本語が適切だというのがタイトルの由来です。

結果的にマイクロソフトは OS とブラウザの両方の市場を制覇したわけで、勝ち負けという評価基準で考えれば、どちらもプロジェクトとして大成功である。
それにも関らず、「熱烈なファン」という観点から見ると、数においてもその熱烈度においても、アップルの方が断然強いのである。それが私には長年不思議で(かつ不満で)ならなかったのだが、アップルのチーフアーキテクト スティーブ キャップスの言葉ですべてが明らかになった。
マイクロソフトのプロダクツにはソウル(魂がない)」
この言葉には本当にまいった。

この悔しさとも思える気持ちわかる気がします。Mac OSiPod の本質的な機能とは直接関係がないけど相当なこだわりを持って作られた機能美、造形美は確かに勝つことだけを最優先に考えると不要という決断が下されていたかも知れません。そこにはソウルがあったのでしょう。
米国のマイクロソフトには、日本にはごく少数しかいない「ビジネスのことがわかる技術者」「ITのことがわかる経営者」がたくさんいるというのも、頷けます。私も技術者のはしくれですが、米国の技術者と話をするとかなりの頻度でビジネス/マーケティングの話になることがあります。ダブルメジャーがごろごろいる世界というのはやはり凄いんだなぁと感心してしまいます。感心しているだけの私とダブルメジャーを取得しようと勉強している著者とは(当たり前ですが)かなり違いますね...
「日本は特別」と主張する日本人に対して、米国人は自国のことをどう考えているかを知ることは、彼らと仕事をうまくやっていく上でのヒントにもなります。詳しくは、本書を読むことをお勧めします。
後半は、西村博之、古川淳、梅田望夫との特別対談となっており、これが思っていたより面白かったです。特に西村博之と古川淳の両名の対談が個人的には興味深かった。古川さんがマイクロソフトのことを悪く言うのを聞くのは心地い気がしないのですが、すべて共感するとは言わないものの、やっぱり話は面白いです。例えば、こんなことがポンポンと出てきます。

仕事人には2つのタイプがいるという話を聞いたことがあるんだ。「上を見て」仕事をするタイプと、「天を見て」仕事をするタイプ。上司の顔色や直近の自分の損得だけで働くのが「上を見て」仕事をする人、「天を見て」仕事をする人は、会社や上司のためではなくお客さまのためにいい仕事をする

お客様のためにしている仕事が会社の方向性と合致していなきゃいけないので、どちらも満足できているのが理想ですけど、現実には難しいことも多いでしょう。
あとブログを半永久的に保存してくれるサービスというのがあればいいなという話は強く同感。今はまだブログが一般的に使われるようになってから10年も経っていないので、誰もそれほど強くその必要性を感じていないけど、近い将来必ずそういったサービスが必要になるでしょう。著者も書いているように私も葬儀費用をブログ保存サービス fee にあててもらいたいものです。