キャズム

CHASM

キャズム (原題: Crossing the Chasm)」(Geoffrey A. Moore 著、川又政治訳)。
ご存じハイテクマーケティングのロングセラー。テクノロジーライフサイクルやキャズムのことも多少は知っていたけど、ちゃんとこの本を読んだ訳ではなかったので、ちょっと古いとか今更という気がしないでもないが読んでみました。きっかけは、上司がこのミーティング中にキャズムのことを口にしたからです。
私はマーケティングが専門ではないけど、テクノロジーに基づく製品が市場に受け入れられていくプロセスを、製品ライフサイクルの進行にともなって顧客層がどのように変遷するかということは知っておくべき重要な事柄であり、なぜキャズムを超えるのがそれほど難しいのかは、初版から20年弱経った今でも十分に役に立つ内容です。
Early Adaptors と Early Majority の大きな差、キャッチ22、マーケティングに携わる人たちの間で正しく認識されていないキャズムキャズムの時期の販売戦略、ニッチ市場から攻めるアプローチ、ホールプロダクトとは、口コミ効果など、前半はぐいぐいと引き寄せられる内容が目白押し。多くの人がマーケットリサーチなどの数値に踊らされているなど、身に覚えのあることも多くとても興味深い内容が続く。

一番ピンを倒し、そこを橋頭堡とする。そして次のニッチ市場に進出することによって、市場の拡大を図る。

この最初の一番ピンをきちんと特定できるかが重要なポイントであり、本書ではその方法についても解説されている。

キャズムを越えようとするときには、顧客の数でターゲット・マーケットを決めるのではなく、顧客が感じている痛みの大きさで決める。

我々はこの部分も勘違いしてはいないだろうか。私はマーケティングの素人なので、偉そうなことを言うつもりはさらされないけど、こういった知識はないよりもあった方がおもしろいことは間違いないと思う。

「嘘には3つの嘘がある。普通の嘘、とんでもない嘘、そして統計」 マーク・トゥエイン
予測値はすべて砂上の桜閣なのだ。
「3年後には1億ドルの市場となる。その市場の5パーセントを取れば…」そのような声が聞こえたら…

こういった予測数値がどこかにあれば、喜んで使っているし、ローデータ環境である場合は何の疑いも持たずに信用してしまっていた。気をつけなきゃ。
それからシナリオの重要さについてもたっぷりと解説されている。アメリカ人がとてもシナリオを重視しているのは、こういったところがベースになっているのかも知れないと今更になって感心しました。

ポジショニングという言葉は名詞であって、決して動詞ではない。つまり、ポジショニングというのは、企業あるいは製品のあるがままの特質を表わすものであり、「そうあればよい」とか、「その方向にもっていきたい」という属性を表わす言葉ではない。

これも(私自身を含めて)誤った言葉の使い方をしている人を見かけることはないでしょうか。ポジションステートメントの構造は、エレベータピッチを作成するときに大いに参考になるので、ぜひ覚えておきたいところです。
また、プロダクト・マネージャとプロダクト・マーケティング・マネージャの違いってわかります?
自分はどの顧客層だろうと考えてみたけど、Early Adopters になりきれないEarly Majority といったところでしょうか。自分の専門分野から外れるほど Early Majority〜Late Mojority の傾向が強くなっている気がします。