シマノ 〜 世界を制した自転車パーツ。

シマノ

シマノ 〜 世界を制した自転車パーツ」(山口和幸著)。
同僚から借りて読んだ本です。大阪は堺市にある町工場が自転車パーツの「世界標準」となるまでの軌跡をつづった本。シマノは自転車パーツメーカーであって、自転車メーカーではないのです。自転車の中枢神経を担うシマノ製品なので「自転車界のインテル」と呼ばれるそうです。
シマノのトップ、開発・営業の主要人物の声をふんだんに取り込んで、シマノがどのような理念を持ってどのように成長してきたのかが書かれており、当たり前だが登場人物はみんな大阪弁なので個人的にはより愛着を覚えリアルな感じが出ていたと思う。本書を読んでいると、まるでプロジェクトXの番組でも見ているかのようだ。シマノ製品のフラッグシップであるデュラエースの開発を通して技術者スピリットあふれる個性的な会社のリアルなストーリーが楽しめました。自転車部品の知識が多少あった方が助けにはなるけど、そういった知識がなくとも十分に楽しめる内容だと思います。
デュラエースは、ジュラルミン+エースの造語だったこと、フリーハブ、HGギヤやSTIレバー誕生のストーリー、エアロ戦略の失敗と挫折、ランスアームストロング用のペダル、ツール・ド・フランスでの勝利、冷間鍛造、積極的な海外戦略など引き込まれる内容が次から次へと紹介されます。
以下引用

  • 若い技術者には、もし自信があるなら、時にはマネージメントへの反発も恐れないで欲しい。結果は歴史が必ず証明するものですから。
  • カンパニューロを尊敬するシマノの気持ちというのは生涯変わらないものです。
  • 3年先のところへ意志を置いて、どれだけエキサイトして、血を燃やして、そこへ突っ込んでいくか。それがないと開発の仕事はできないね。それが新製品として花が咲いていく。営業さんがよく言うような、こういうものを作ってくれというヤツは、顕在的なものでしょ。お客さんから聞いたとか、この小売り屋さんから聞いたとか。そういうものだけを作っていたら、ダメなんですね。実際のエンドユーザー、持っている人、走っている人、レースに出ている人、そういう人たちの潜在欲求をつかんで欲しいな。
  • 遊びが本気でできる人は、ものをクリエイトできる。この会社は趣味人が多い。趣味で得られた情報というのは、忘れないし、身体に染み付いているのを感じる。
  • やっぱり自転車好きな人間が自転車関係の仕事をするというのは、まさに就職でね。就社ではなくて、就職なんですね。

シマノの本社が創業当初から堺にあったことなど、つい最近まで知らなかった。場所を調べてみると仁徳陵のすぐ近くなので、私が東京に引っ越してくる前に住んでいた大阪市住吉区杉本町からほんの5〜6km のところである。そこに住んでいたのは15年以上前の話だけど、あの当時から Dura-Ace の開発などをすぐ近くでやっていたんだということを知り、少し驚いた。そんなに近くにあったのなら、自転車博物館に一度くらい行っておけばよかった。

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あ、それから、今中大介シマノの社員だったこともこの本を読むまで知りませんでした。
本書はカバーを外すとまっ黄色の表紙になっています。しおりの紐も黄色。シマノのカラーと言えば水色という印象だが、これはきっとマイヨ・ジョーヌの黄色なんだろうな。心憎い製本である。