「外国人との仕事に悩んだ時に読む本」(賀川洋著)。初版が1999年末と少し古い本だが内容は今でも十分に通じるものです(amazon では入手困難になっているみたい)。外資系の会社で働く人や外国の会社と仕事をする、つまり外国人(特にアメリカ人)とビジネス上円滑なコミュニケーション必要がある人にとってはとても参考になると思います。英語力はもちろん大切だけどそれ以上にコミュニケーション力や相手の氷山の理解が重要というわけですね。
日本だろうがアメリカだろうが顧客が大切なことには変わらないが、実はその内容というか文化に大きな違いがあり、方や「お客様は神様」とし、もう一方は顧客は重要なビジネスパートナーであり絶対に逆らえない対象ではないということ。担当者レベルに与えられている権限にも大きな差があり、「根回し」の必要性も違うはず。必要であればこの「根回し」という事情をきちんとアメリカ側に説明してく必要がある。ただおもしろかったのは、日本に数年勤務したあるアメリカ人(ポジションは結構上)が “nemawashi” はアメリカでも効果があると教えてくれたことがある。ちょっと意外でした。
日本企業は、全体で合意ととりながら長期的なリスクと回避しながら進めていくのに対して、アメリカはその時々のチャンスを敏感にとらえて前進させる違いがある。この辺りを理解した上でコミュニケーションする場合とそうでない場合は大きな差がでる気がする。
過去やそこで培われてきた様々な土台を大切にする日本人の氷山と、個々人のパフォーマンスに支えられながら、未来へ対して積極的で、過去にこだわることに対してそれほど関心を示さないアメリカ人の氷山。
「2度あることは3度ある」という日本の格言と、アメリカ人が子供のときに聞かされる “There is always tomorrow” (常に未来がある) という言葉。
アメリカ人に何かを説明するときに、日本のマーケットは特殊だという表現を使用したことのある人は少なくないはず。この日本は特別だという考え方は、インターナショナル カンパニーから見れば、単なるネガティブな自己主張ととられても仕方がなく、言い換えると、どの国ももちろんユニークなわけですから。そこで本書では次のように書かれている。
- 日本が特殊であるという発言の次にくる、それならばどのようにすればよいかという提案
- その提案を実施したらどのようなベネフィットがあるかという指摘
- その提案を実施するには、次にどのようなアクションが必要か、そして自らは何をやるのかというイニシアチブの提示
氷山の違いによって生じる様々な問題は、頭でわかっていてもかなり意識的にこちら側が明示的に物事を説明しなければなくなることはないような気がする。例えば「すぐに〜して下さい」の「すぐに」は良くない表現の例。「阿吽の呼吸」という氷山で育った我々は、ちょっとくどいかなと思うくらい明示的で丁度よいか或いはそれでも少し足りないくらいなのかも知れませんね。
- 今日の1曲: It Makes No Difference / The Band (1975)