異文化の波 (1)

Blackcomb2006-09-02

以前インターカルチャーのトレーニングを受けた時にもらった単行本「異文化の波―グローバル社会:多様性の理解」(Fons Trompenaars, Charles Hampden‐Turner著 須貝栄訳)を読みました。全体としては興味深い内容で、異文化の理解が深まることにより見えないものが見えるようになってくるのは明らかなので、以前受けた2日間のトレーニングを補完するにはいいリソースと言えます。ただ、翻訳の質がいまひとつなせいかどうかはわかりませんが、読みづらい日本語・訳語だなと感じる部分が散見された。(人的資源担当は人事担当でいいんじゃない?) ちなみに原題は、"RIDING THE WAVES OF CULTURE - Understanding Cultural Diversity in Business" です。ブログのタイトルに(1)と付いているのは、(2)以降があるかも知れないから。
ここでは、いくつか印象に残った箇所を引用させていただきます。

「日本に今後どれくらい駐在される予定ですか?」
「この合弁事業が成功するまでです。坂本社長。」
「それならば、契約書に署名しましょう。」

あるアメリカ企業の駐在員と日本企業の社長のやりとり。日本の企業文化が何を重要視して、何をスタート地点においているのかを示す好例である。2番目の回答が素晴らしかったら、うまくいったんですね。

個人主義的な文化における意思決定過程は、たいてい短時間のものであり、「孤独な個人主義者」が運命を左右するのはほんの数秒間の間で「永続性のある決定」をするのである。このような意思決定は、迅速な審議・検討とか、『一分間マネージャー』などを作るけども、マネージャー達は、自分達が決して望んでいないような、または賛成していないような決定が下されると、組織ぐるみで共謀してその決定を無効にしてしまい、その数ヵ月後にこのようなことが発覚することがよくある。
意思決定の遅延を長期間にわたってもたらすこともある日本の稟議過程だが、あまり簡単にばかにすることはできない。

どうも我々はマネージメントとかを学ぶ時にアメリカ式を模範とすることが多いが、確かに殆どにおいてそれは間違ったアプローチだとは思わない。正直自分にも合っていると思う。でもどれが「善」「正解」とか「悪」「不正解」といったものではないことも理解して対応できると異文化社会では強いかも。

共同体主義的な社会が好むのは、コンセンサスに到達するまで審議・検討することである。最終結果は、それを得るまでに長時間かかるが、非常に安定したものである。個人主義的な社会によくあるのは、決定と実行の間の不一致である。

う〜ん、これってどちらも思い当たるふしがありますねぇ。でも外資系で働いていると共同体主義が認知されることはあまりないのではないだろうか。

皆が大袈裟に感情を表出する文化において、最大級の感情の高ぶりを適切に表す言葉や表現をみつけられないことがあるのは、そのような言葉や表現がすべて使い尽くされているからである。

感情表出を最も受け入れないのはエチオピアと日本だそうな...

アメリカ人は感情を表出するが、感情を「客観的」で「合理的」な決定から分離する傾向がある。
イタリア人と南ヨーロッパの国民は一般的に感情を表出して、感情を客観合理性と分離しない傾向がある。
オランダ人とスウェーデン人は感情を表出せず、感情を客観合理性と分離する傾向がある。
繰り返すが、このような違いに「善」も「悪」もない。

なるほど。

日本の企業文化が西洋人にとってまったく馴染みのない用語を用いるのは、明らかに関与拡散性を関与特定性の前に置く目的があるからである。日本企業で使われる「受け入れ時間」という用語は、提案された変更を実施する前に議論するのに必要な時間のことである。また、根回しというローマ字でも世界に通用するようになった用語は、文字通り低木や背の高くなる木の根を移植する前に切りまとめることである。この言葉が指しているのは、変更を実施する前に幅広く相談することである。

実は、この部分を読んだその日か次の日に本当にアメリカ人の口から「根回し」という言葉を聞いてびっくりしたことを覚えている。そのアメリカ人曰く「アメリカでも、根回しは重要で有効な手段です」と言っていました。これを 100% 受け止めるつもりはないが、まったくのでたらめでもないのだろうと思う。

関与拡散的文化が低い離職率を持ち、配置転換をあまり行わない傾向がある、ヘッドハントの傾向がない、企業の乗っ取りが稀なのは、人間関係に亀裂が生じるためと、...(以下省略)

最近はそういった傾向は薄れているというか明らかに変化が起きているのは明白であろう。M&Aに関しては、よろしくないニュースばかりが目立ってしまっていますけどね。